砥石も大事だが研ぎ場を確保するのが何よりも大事だと気づいた話
ノミやカンナを研ぎながらようやく満足のいくレベルに仕上げられるようになってきた。それもこれも頻繁に刃物を研げる環境が整ったからだ。
ちょっとずつコツがつかめてきたような気がするので、少しまとめてみたいと思う。
研ぎ場
刃物を研ぐにあたってまず最初に確保すべきもの、それが研ぎ場である。研ぐのに必要な道具を広げて、安定した姿勢で刃物を研ぐことができる場所。そして後片付けがさっとできる、そんな環境をまずは用意するのである。
そもそも研ぐための専用の流し場が用意できる人にはこのあたりの話は不要だろう。
私が最初にカンナの刃を研いだときは、室内のシンクで作業を行った。はじめてのことで勝手がわからず一日中研ぎ続けたのにまともな刃がつかなかった。そういう意味でも大変だったのだが、何よりも研いだ後の片付けが大変だった。周りに砥石の泥が飛び散るのでその片付けで気が滅入る。
片付けが大変ということは、次に研ぐ作業をしようという気がなかなか起きない。実際私が刃物を頻繁に研ぐようになったのは、研ぎ場を用意してからだ。
普段使うシンクの近くで作業することは、水道が近くにあること以外にメリットがない。シンクの周りは研ぎ汁で汚れ、使った砥石をおいた場所も汚れる。そして最後に砥石の泥を溜まった水をシンクに流すと、シンクが泥だらけになる。これを片付けるのがなによりもしんどかった。
その後は私は外で研ぐ作業を行うようになる。NFボックスに水をためて、そこに端材で作った砥石台を乗っけて作業をするのである。しかしこれはこれでうまくいかない。砥石台から水がボックス外にこぼれてしまうのである。シンクでの作業と比べるとだいぶマシになったが、それでも片付けがめんどうくさかった。
そして最終的にいきついたのがNFボックス内に砥石台をおさめてしまう方法である。
こちらの動画を参考にした。
ボックスの中にすのこを配置して、そこに砥石をおいて研ぐ。基本的にはボックの中での作業になるので、水がこぼれてもボックス内におさまる。おかげで後片付けがかなり楽になった。
この方法のよいところは、メインのボックスには水を張らないことだ。外側の大きなボックスの中に水がこぼれ落ちるが、基本的には少量なので基本的に無視できる。放っておいてもボックス内だから特に困らないのだ。片付けにかかる時間が劇的に減った。
後片付けがらくになるということは、それだけ気軽に作業ができるということである。これまでは片付けに時間がかかるので、しっかり時間が確保できるときにしか研がなかった。しかしこのスタイルの研ぎ場にしたことで、経験値がいっきに増えた気がする。
このようなプラスチック製のケースを使って研ぎ場にした1。平時は砥石を入れておけるし、水をためて研ぐ作業にも使える。一石二鳥である。
砥石について
これまで自宅にあった粒度不明のおそらく仕上げ砥と思われる砥石を使って仕上げていたのだが、別途仕上げ砥を買ってそちらで仕上げるようにした。一遍のくもりもない鏡面、とまではいかないのだけれど、刃先の仕上がりは抜群に良くなったと思う。
8000番の刃物の黒幕を仕上げ砥として導入した。中砥はキングの1000番の砥石を使っている。荒砥はモノタロウで買った300番のもの。
荒砥についてはもっと番手の低いものにすればよかったなと思う。買った当時はよくわかってなかったから仕方がないが。
最初のうちは荒いやつからおおまかに形を作って、最終的に仕上げできれいにしようとしていた。しかし今は荒砥にこそ時間をかけるようになった。一部平になってないところがあると、仕上げ砥ではそこは絶対に直らないことを実感できたからである。
特に最近研いでいるのが中古のノミなので、刃の角度を修正するなど大きく形を整える必要があるものばかりだったからかもしれない。荒いやつでしっかり形を作って、仕上げは荒砥でついた傷を取る程度の気持ちでやる。仕上げ砥を使って研ぐ時間はかなり短くなった。
1000番の砥石からいきなり8000の砥石で仕上げても十分に仕上がる。ただし細かい傷が残ってるので、少しずつ砥石の番手を上げていくようにしたほうがもっときれいに仕上がるのだと思う。もっと経験値が上がると間に砥石を追加して作業するかもしれないが、現状ではこれで十分かなと思う。
ダイヤモンド砥石
砥石の面直しにダイヤモンド砥石を使っている。2000円しない両面ダイヤモンド砥石だ。
最近では片面を砥石の面直しに、もう片面は刃物をすりおろすのに使用している。
刃物がサビによる腐食でえぐれていたりすると、その部分を削り下ろさないとならないことがある。そんなときは砥石を使うよりもダイヤモンド砥石でゴリッと削るのだ。ダイヤモンド砥石なら平面を直す必要がないので作業が早い。
個人的にはこの商品を使ってみたいなと思っているが、これだと面直ししかできないから今のままでいいかなと思っている。
砥石の面直しに使うのであれば、厳密にはダイヤモンド砥石自体が平面であることが求められる。私も最初のうちはそこがとても気になっていたのだが、極端に歪んでなければいいやっていう感じで気にしないことにした。人によってはブロックにこすりつけて面直ししてる人もいるのだから、あんまり気にしすぎなくてもいいだろう2。
私の使っているダイヤモンド砥石は、片面はまあまあ平らである。そちらを砥石の面直しに使っている。もう片方はちょっと歪みがあるかなという感じなので、こちらを使って荒削りしてる。
あると便利なもの
研ぐときにあると非常に便利なものが、油性マーカーである。ゼブラのマッキー(極太)がちょうどよいと思う。
これは砥石に刃物を当てた際に、どの部分が実際に砥石にあたっているかを確認するのに使う。刃先をマーカーで塗ってから砥石に当てる。マーカーが消えた部分が砥石にあたっている部分だ。
この確認を行うと上達が早くなると思う。私はこれを頻繁にするようになってから感覚がつかめたような気がしているから。
基本的には極太のマーカーがあればよい。たまに極細がほしい時がある。これは刃先が斜めになっているのを矯正したいときとか、カンナの耳を調整したいときなどに使う。
あとは個人的によく使っているのが、顕微鏡である。刃先を拡大して、研いだ結果がどうなっているかを確認できて重宝している。私が用意したものはレイメイの顕微鏡で、[こちら]に詳細を書いている。
顕微鏡があると刃返りができているような気がするけれど確信が持てないとき、刃先まで研げているか確認するのに使える。研ぎ上げた刃先の仕上がり具合を確認するのにも使えるので、研ぐ機会が増えるほどによく使うようになった。とはいえ、これも研ぎのコツを掴んでしまえば出番がなくなるきはするので、必須のものとはいえない。しかし悦に入れるので持ってると気持ちいいものではある。
他に刃物の角度を固定できるホルダーや治具の類がほしいなと思うことはある。一度自作して使おうとしたことはあるが、セットアップが面倒くさくてやめた。刃先の角度はフリーハンドでもだいたい安定して研げるようになってきたし、なくてもなんとかなる。
あとはベンチグラインダーもあると便利かもしれない。刃の角度を思いっきり矯正しなければならないとき、ベンチグラインダーでごっそり削らないと時間がいくらあっても足らないから。
まとめ
研ぎの上達のためには、当たり前かもしれないが研ぐ機会を増やすことが大事だ。研いで実際に切って切れ味を確認する。このサイクルを繰り返さないと上達しない。そのためにはサッと研げるような環境が大事なのだ。
確かに砥石が大事ではある。仕上げ砥はしっかりしたものを使うと確実によい仕上がりになるのは間違いない。
けれども、そもそもこの研ぐ作業は刃物を使えるようにするための準備作業なのだ。1本の刃物を研ぐのに準備や後片付けに時間を取られていては本末転倒である。
その意味ではさっと研ぎに入ってさっと片付けられる環境をまず準備すべきだったなと思う。その意味ではbayashi23さんの簡易研ぎ場スタイルが私にはぴったりだった。
特に研ぎ場周りの汚れがボックス内でほぼ収まるのがすごいありがたい。片付けにかかる時間がものすごく短いので、気軽に研ぎ作業にとりかかれる。ちょっと1時間だけでもやってみようかなとか、気軽に取りかかれるようになった。
砥石も大事ではあるのだが、砥石があっても段取りに時間を取られるようではそのうち億劫になる。そもそも研ぐこと自体が億劫な作業なのだから。
それでも頻繁に研ぐようになって、ようやくコツがつかめてきた気がする。完全に理解した3、という境地である。
刃物研ぎ上達のために、研ぎ場をまず整えよう。それが今回言いたかったことだ。
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