幸せになる勇気とは一歩を踏み出し歩み続ける勇気
幸せになる勇気は、「嫌われる勇気」の続編です。前作と同様、青年と哲人の対話形式でアドラーの心理学、哲学に迫る物語となっています。
青年の「このペテン師めっ!」という哲人への罵りが、実に私の気持ちを代弁していてところどころでくすっとしてしまいましたが、その内容はいろいろと考えさせられるものでした。
本作の登場人物である青年は、前作の「嫌われる勇気」でアドラーの教えに触れ、その教えを実践し広めるために教師になりました。しかし、アドラーの教えである「叱るな・褒めるな」を実践していくと教室が大いに荒れてしまい、授業どころではなくなってしまいます。そこで青年は、アドラーの教えなど実際の教育現場では役に立たない単なる理想論だと、哲人を論破するべく再び師のもとを訪れたという内容になっています。
そういう流れなので、「叱るな・褒めるな」とはどういうことなのか。教育の場での実践を踏まえて改めてアドラーの教えについて語り合う二人。褒めるとどうなるのか。叱ることがなぜいけないのか。教育とは何なのか。自立するとはどういうことなのか。愛とは何か。最終的には愛にたどり着きます。
我々は愛することによってのみ、自己中心性から開放される。他者を愛することによってのみ、自立をなし得る。そして他者を愛することによってのみ、共同体感覚にたどり着く。
どういうこっちゃという人は、読んでみてください。
まず一歩を踏み出すことが大切
幸せになる勇気を読んでみて要約するとすれば、愛にせよ尊敬にせよ好意にせよ、まずは自分から与えなければ始まらないということなのだと思います。
他人が愛してくれるから、尊敬してくれるから、好意を寄せてくれるから。だから私も愛を返すんです。それは順番が違うんだぞということです。
それはこちらから好意を示したとしても、相手も示してくれるとは限らない。それが怖いから自分から先にはできない、単に臆病なだけだということです。
そもそも自分から与えてみても無碍にされた経験がある。自分から与えても、何の反応もないどころか逆に傷つけられたりするかもしれない。怖い。だから与えられるのを待つ。そんな経験誰しも持っているのではないでしょうか。
私自身も非常に共感できることであり、だからこそ哲人の「それは目の前にいる人との関係を結ぶ勇気がない言い訳でしかない。あなたは可能性の世界に生きている」という言葉は非常にグサリときました。
確かに相手から先に好意を示してくれることもあるでしょう。でもそれを待つということは他者に依存するということです。
他者の行動をコントロールすることはできないのだから、自分から踏み出すしかない。自ら踏み出す勇気を持ちなさいと哲人は語ります。そこで勘違いしてはいけないのは、「一歩踏み出す勇気」とはとりあえずやってみる勇気ではなく、「歩み続ける勇気」を意味するということです。1回やってみて失敗したから「やっぱりダメじゃないか」と諦めるのではなく、失敗しても歩みを止めないという勇気を持ちなさいということです。
これが非常に難しい。アドラーの教えを理解することも難しいですが、何より実践することが難しい。
でも最終的には、自分から踏み出してみなさいということに帰結するのだと思います。
見返りを求めずただ与えろなんて、宗教かよと思う人もいるかもしれません。私も若干思わなくはなかったのですが、この本の中でアドラーの教えは宗教ではなく哲学なのだということが語られています。宗教は答えが与えられて、それを信じるか信じないかの問題です。哲学は、答えがあるか分からないけれども、それを探して歩き続けるものであるということだそうです。
この本の中には「こんなときはこうすればうまくいく」なんて分かりやすい答えは書いてありません。書いてあるのは考え方、捉え方や知識です。
だから表面的な「褒めるな・叱るな」を実践することが大切なのではないと読んでいて感じました。ほめなければ、叱らなければ、幸せになれるわけではないです。ほめるな・叱るなは、相手を一人の人間として尊敬し、対等の関係を結ぼうとすれば自ずと導き出されるものなのです。その表層だけ取り入れてもうまくいかない、そういうことなんだと思います。
この本で語られていること、アドラーの心理学で語られる特徴的なことを実践すれば、それがすなわち幸せに繋がるわけではないということは肝に銘じる必要があると思います。たとえば課題の分離をするから幸せになれるのではないのだと思うのです。
答えは分からないからこそ、共に歩んで、共に答えを探すのです。哲人のそんな言葉が、実は一番大事なことなのではないかなと思います。
というのは私がこの本を読んだ感想なわけですが、みなさんはどんな感想を持たれるのでしょうか。
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