反応しない練習を読んだ

反応しない練習
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感情に振り回されることを止めて、自分の感覚に集中してみなさい

嫌なことがあって気分を切り替えようとゲームを始めたものの、ゲームをやりながらふとした瞬間に嫌な気持ちがふつふつと蘇ってきて、気がついたらゲームそっちのけで嫌なことを反芻していたなんていう経験は誰しもあるだろう。ダメだダメだ、気持ちを切り替えないとと思っても、気がついたらまた考えてしまっている。どうしたらいいんだという悩みは私だけのものではないだろう。私もつい最近そんな出来ことがあって、どうにかしたいなぁと思っていたところに、この本の存在を知った。

Amazonの紹介文には「原始仏教入門」とある。「宗教の本なの?」と疑問に思われる方もいるかもしれないが、この本にはあまり宗教色はない。少なくとも「信じれば救われる」みたいな話ではない。もっと合理的に、「無駄な反応をやめなさいよ、それが合理的だよ」とわりと淡々としたお話である。

「腹の立つことがあった、ムカつく!」と反応することはどういうことなのか。それの何が無駄なのか。反応しないようにするために、こういうことやってみたらどうだろう。そんなことが書かれている本である。

反応しないための基本的な考え方はまあ理解できたのだけれども、「練習」というタイトルがついているわりに、具体的な練習(事例)についての話は少なかった気がするなぁという印象を受けた。基本的な考え方について語られているが、個別具体的なケースで「こう考えてみなさい」みたいなものは少なかった。そういうものを求めている人にはちょっと物足りないかもしれない。

内容については、実際に読んで体験するのが一番だと思う。私はところどころ「おお、なるほど!」と、とても共感のできるところがあった。逆に腑に落ちない部分もあったりという感じだったが、総じていえば読んでよかったなと思っている。

ちなみに実際に読む前に感じていた疑問点として、反応しない=感情を殺すこと、つまりあらゆるものへの興味を断って、無感動な人間になることなのかなと思っていた。決してそういう内容ではないので、そこは安心してもらいたい。読みながら「ダブルスタンダードっぽい」と感じたのは事実ではある。しかし「あなたは悟りを開くために修行してるわけじゃないんだから、あらゆる欲を捨てる必要はない」ということなので、別にダブルスタンダードというわけではないようだ。「たのしー」はそのまま楽しんでいればよろしいということだと思う。

面白いのが、「嫌われる勇気」で読んだアドラーの心理学に通じる部分があるなぁという発見があったことだろうか(順番からいうと、こっち(原始仏教)の考え方のほうが先なんだろうけれども)。それは「承認欲求の否定」という部分である。

「嫌われる勇気」でも承認欲求は否定されていた。他人の承認を求めることは問題行動につながっていくからだめだと。ライフスタイルを転換して、自分自身が自分を認めるようにするのだということが説かれていた。この「反応しない練習」でも承認欲求は悪者として出てくる。そもそも欲を捨てなさいというのが基本なので当たり前なのかもしれないが。

この本で面白いなと思ったのは、その承認欲求が本人にとって「快」なのであれば、別にいいんじゃないのというところだろう。褒められて嬉しいからがんばる。本人のやる気になるのであれば、それでいいじゃないっていうゆるさがある。ただしその承認欲求が、「がんばってるのにまったく褒められない、こんなにがんばってるのになんでだ!」と、「不快」になっているなら、そこは向き合い方を考え直しなさいよという扱いなのだ。この点はなるほどなぁと思えた。

「嫌われる勇気」ではコミュニティへの貢献というくだりがあったと思うのだが、その貢献も1つの承認欲求の形ではないかと思うのである。他者に認めてもらうためにやるわけではないから、承認欲求からくる行動ではないのだろうけれども。その部分のあやふやさを、「別にいいんじゃない、あなたは修行僧ではないのだから」というゆるい扱いでいなしているのが面白いなぁと思った。

こんな説明(書評)であなたの興味を刺激できたかはわからないけれども、日々の不条理に立ち向かう1つの考え方として面白いんじゃないかなと思う。合理的かつあれもこれもバッサリ切り捨てる感じかと思えば、別にいいじゃんといきなりゆるくなったりするけど、個人的にはアドラーの心理学よりもわかりやすい気がした。わかりやすいというか、実践しやすいというほうが正確かもしれない。

冒頭に書いた例の話だが、嫌なことが頭のなかに蘇ってぐるぐるしてしまうというやつである。これはこの本では単なる妄想なのだそうだ。自分の頭のなかに蘇ってきた時点で、あなたの感情が見せている妄想なのだと。原因となったあいつが悪いんだなんて思っているかもしれないけど、それは単に自分の記憶に対する感情の反応であって、すでに相手は関係なくなっているのだ。そんな妄想に振り回されるときは、感情ではなく己の感覚に集中してみなさいということだった。

どゆこと?と思ったのであれば、本書を読んでみてはいかがだろうか。嫌われる勇気(アドラー心理学)もあわせて読むと、承認欲求周りの話で共通点があって面白いかもしれない。

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