ゲームのデザインって奥が深い、ついやってしまう体験の作り方
ついやってしまう体験、何かTwitterかなんかで見かけて気になって読んでみたんだと思う。何に興味を持ったかと言うと次の2点だ。
- なぜついやってしまうのか
- その仕組を利用して活用するにはどうしたらいいか
どっちかというと後者の視点で読みたいと思った本である。
前半と後半に分かれている
なんとも優しい作りで、ビジネスで使いたいなら279ページから読めといきなり書いてくれてるあたり、面白い作りをした本である。実は「このビジネスとかで活用したいなら279ページから読んでね」というのもしかけのひとつで、こう書かれるとなかなかその間を飛ばして読むことができないから面白い。これもついやってしまう体験のひとつといえるだろう。
279ページまでに何が書かれているかと言うと、みんながよく知っているゲームについて、どういうデザインが行われているかを著者の考えが書かれている。
たとえばマリオ。あれの最終目的って何か分かりますかって言う話。
たとえばゼルダ、ドラクエ。これらのゲームをやったことのある人であれば、「ああなるほど!」と緻密に計算されつくされたデザインの意味を知ってびっくりする。
これらのゲームをやったことがない人にとってはつまらない部分かもしれないが、この部分は重要な箇所である。その場にあるものでどうやればいいのか分かるように設計するか、それともプレイヤーの常識を利用して動かさせるかという点だ。なるほど、ゲームデザインは奥が深いと思わされた。
体験を作る
どちらかというと、私の場合はどれも遊んだことのあるゲームが題材として出てきたので、ついつい読みふけってしまったというのが正確なところである。しかし、ゲームデザインとして必要な要素を説明するのに、具体例があるとすっと頭に入ってくるから不思議である。
たしかにね、なぜマリオはあのデザインだったのかとか、デザイナーはそこまで考えてあれを作り上げてるのかって思わされる。
そういった意味では、最近のチュートリアルでゲームの遊び方を教えるというやり方は果たして正しいのかなっていう気持ちになってくるよね。プレイヤーに「ここはこうやればいいのでは」という仮設を立てさせる仕組みづくり、そしてその仮設が正解だったときに得られる嬉しさ。それがゲームを遊ぶ原動力である。
チュートリアルで説明しなければならない複雑な仕組みが悪だとは思わない。この本で紹介されているゲームはほぼファミコンのゲームなので、できることが少なかった。だからこそシンプルな要素で表現できた。逆に今はそんなシンプルなゲームは見向きもされない。結果ド派手な演出とか簡単操作とかが前に出てきて、肝心なゲームの内容につまらないと思ってしまうのだろうななんて感じてしまった。
ついやってしまうように仕向ける
大体この本を読もうと思ったきっかけは、実体験に活かしたいからだ。その方法はどうすればいいか。この本が前半というかその大部分を割いて説明したプレイヤーに与える体験、それを実体験に活かすにはどうするか。
考える・話し合う・伝える・設計する・育成する。本書では最後にこの5つの実体験について、いかにゲームで利用されているついやってしまうことを利用するかという観点でちょっとだけ解説してくれる。
ポイントは、たとえば考えるであれば、考えることを命題にしないということだ。つい考えてしまう、そんな体験をしてしまう環境を作ることから始めようというものである。
人はなぜ特に支持されたわけでもなく「つい」やってしまうのか。そのメカニズムが分かれば、それを応用して「つい企画を考えてしまう」仕組みを作るのに応用できるはずだ。
企画を考えるだけではない。会議での話し合い・折衝だったり。プレゼンテーションとして伝えるべき内容を伝える、これはゲームの本質にも関わってくるところだから一番想像しやすいかもしれない。
この本を読んで分かった気になっているだけかもしれないけれど、回り道に意味があるんじゃないかっていうことがいえるのではないかと私は受け取った。いい企画が出ない、ではなくて、では企画が勝手に出てくるような仕組みを作ればいいのではと視点を変える大切さとでもいおうか。
視野を広げて、どうやれば自発的に動いてくれる仕組みができるだろうか。そう考えるのである。そのためのヒントが「ついやってしまう体験」というわけである。
急いでいる人は279ページ目から読んでくださいなんていうしかけを作っておきながら、実はそれまでの大半で語っている「なぜ人はついやってしまうのか」の説明こそが重要である。そういう作りからしても面白い作りをしている。書かれている内容が面白いのはもちろんのこと、作り自体が面白いというのが面白い。
・・・いったい私はなんかい面白いを書くのだろうか。語彙の少なさが悔やまれる。しかしながら、面白くてすいすい読めた本である。それは、本書が標榜しているように「つい体験してしまう」エッセンスが、本の随所に散りばめられているからにほかならないだろう。
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