あとがきから広げる読書の輪、愚者のエンドロールから読んでみた2冊

愚者のエンドロール
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あとがきから読書の輪を広げるのも悪くない

前回、遠まわりする雛のあとがきに書いてあった本を読んでみた話を書きましたが、今回もそれと同じようなことをしました。他にもあとがきで何か紹介されていないかなと思って、〈古典部〉シリーズを読み返してみました。そうすると、愚者のエンドロールに2冊の本に言及されていました。

ちなみに愚者のエンドロールは、途中まで撮影された映画からその続きを推理するという内容です。

登場人物たちが1つの状況を元に、異なる推理を組み上げていくという部分が「毒入りチョコレート事件」を、途中まで撮影された映画を元に結末を推理していくという部分が「探偵映画」を彷彿させるということです。

毒入りチョコレート事件

1つの事件に対して、複数の人が推理をしていく形式のお話です。まったく同じ情報を元にしても、構成次第でいろんな推理が出てくるんだというところが面白い話、なんでしょう。

ですが、私はこの作品はあまり楽しめませんでした。

話の内容は面白いと思います。同じ情報でも受け取り方によって解釈の仕方が異なる所は面白いです。他の人の推理を元に自説を補正していき、証拠固めをしていって核心に迫ったと思ったら、次の人に見事にひっくり返されてしまうくだりがとかも面白いです。

しかしながら、表面的なところでは純粋には楽しめませんでした。とにかく読むのが面倒くさかったんです。

この作品は、上流階級の人たちが実際に起こった事件を肴に推理ゲームをするという体です。会員制の秘密倶楽部内で行われる推理ゲームであることもあって、登場人物たちの推理披露ショーがとにかくくどい。上流階級の人がしゃべるセリフとしてはとても適切なんだとは思いつつも、もったいぶった言い回しに辟易してしまいました。

セリフの閉じカッコが妙な位置に出てきたりするのも気になって、純粋に物語に集中することができませんでした。そんな感じで始終話の内容よりも表面的なところが気になって仕方がありませんでした。

話の内容が面白くても、読みにくい本は私は苦手なのだということでしょう。古典であることと翻訳文であることも影響があるかもしれません。Wikipediaを見るとなるほどすごい作品だなと思えるんですけどね。私は推理小説が好きだというわけではないんだと思います。

探偵映画

こちらはAmazonのレビューで「映画ネタが多い」という意見が散見されたのですが、実際に読んでみると確かに映画ネタが多かったです。

ちなみに私は映画はまったく見ない人なので、本書に出てくる映画は何ひとつとして分かりませんでした。ですが序盤に出てくる映画の話は、推理小説における叙述トリックのような技法が映画にもあるよという話の流れで出てくるもので、分からないからといって大勢に影響はありません。話の流れのテンポがいいのもあって、特に気になることなく読み進めることができました。

一方、終盤に出てくる映画のネタについては、その映画を知っているかどうかで結末への理解が変わってくるほどには影響があります。私はもちろん映画のネタが分かりませんから、「つまりどういうことなんだってばよ?」と置いてけぼり気分を味わいました。しかしその一方で、この映画ネタの使い方は見事だなとも思いました。おそらくここの部分を詳しくない人にも分かるように書いてしまうと、逆に興冷めしてしまうおそれがあると思います。多くを語らないことで、より情緒的になっているのです。

分かる人だけに届けというような潔さ、嫌いではないです。若干の疎外感を感じはしましたが、こればかりは仕方がないかなと思います。結末と言っても後日談にあたるような部分ですので、映画がわからない人でも本筋の部分が楽しめるのは間違いないと思います。

探偵映画の話の内容はこんな感じです。映画界の巨匠と呼ばれている監督が、渾身の自信作だといって映画の撮影を始めます。誰にも結末を語ることなく撮影に臨んでいたのですが、後は結末を撮るだけというところで急に行方をくらましてしまいます。このままでは映画が上映できないばかりか、この撮影所も倒産してしまうと、スタッフ陣は大慌て。さらには出演している役者たちも、その映画に出資していることが分かり、関係者全員が顔面蒼白に。このままではいかん、なんとかして続きを撮らなければ・・・と奮闘するお話です。

この探偵映画も、1つの状況から犯人(映画の中の)を推理していく形式です。同じ状況から複数の異なる推理が出てくるところは毒入りチョコレート事件と同じです。毒入りチョコレート事件と異なるのは、よりコミカルだということでしょうか。というのも、映画の続きを推理するのは主に役者陣なのですが、自分の出番を増やしたいので「我こそが犯人だ」と主張していくのです。その部分がコミカルでとても面白いです。

映画ネタが分からなくても本筋の部分では何ら問題はありません。何よりコミカルで読みやすかったので、私は愚者のエンドロールより楽しみながら読めました。

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