自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術を読んだ感想
前々から読もうと思っていた「自衛隊メンタル教官が教える心の疲れをとる技術」という本を読みました。結果からいえば、もっと早く読んでいればよかったなと思いました。
ムリ・ムダ・ムラの切り口
生産性を高めるためには「ムリ・ムダ・ムラ」をなくして効率化することが大切だ、というのは聞いたことがあるかもしれません。ムリな道具の使い方をすれば壊れて生産どころではなくなり、ムダが多ければ同じ製品を作るのにより多くの材料が必要となり、ムラが多ければ一定の品質を保つことができずに不良品として弾かれてしまう。だからこれらをなくしていくことが大切なんだというのは、理解できるところだと思います。
本書はメンタルコントロールについて、この「ムリ・ムダ・ムラ」の切り口から解説をおこなっています。
ムリを続けていけば疲れがたまっていき、そのまま放置していたら心を病んでうつ病になってしまう。どうして人はムリをしてしまうのか、そしてそのムリを防ぐために個人・組織でできることは何なのか。
イライラや不安といった感情は、想像以上にエネルギーを消費するものです。こういった感情のムダ使いを防ぐためにはどうしたらよいのか。
そしてやる気や意欲といった形で表れる感情のムラについて、なぜ起こるのか、その対策はどうしたらよいのか。
これらについて、本書は分かりやすく書いてあります。
端的にいえば、本書に書いてあることは「ムリせず休め」ということです。ただ、本当にムリをしている人は「いや、俺はムリなんてしてないし」と自らのムリに無自覚です。それに、そもそも休めといわれてもそんな簡単に休める環境に、みんながみんないるわけではないです(むしろ休めないような環境にいる人の方が多いでしょう)。ただ、そんな反感を感じる人にこそ本書を読んで欲しいと思います。
私自身、うつ病で仕事を辞めた経験がありますが、ムリを続けた結果どうなるかということは、まるで自分のことを言い当てられているかのようでした。ムリを続けていけばこうなってしまうのだということに間違いはないと思います。そして本書は、そんなドロップアウトした人間に対しても光を見せてくれる部分があります。
今回は本書を読んで「なるほど!」と思った内容を少し紹介しようと思います。
7〜3のバランスを心がける
たとえば健康維持のために休みの日にランニングをするとしましょう。必要なシューズやウェアを買いそろえ、走るコースを下調べし、1日目はしっかりと走れてめでたしめでたしです。しかし結局それは長続きしなかったという場合。今まで何の運動もしてこなかったので、そもそも走ること自体が非常にしんどかったのが原因かもしれません。
このとき、自分の意識は「毎日ランニングをして健康管理しよう」としていますが、無意識では「めんどうくさいしゆっくり寝たい」と思っていることでしょう。
目標とおりにランニングをすれば意識的には100点の大満足です。しかしゆっくり休みたいと思っている無意識的にはムリをしているわけですから、0点の落第点となります。これでは無意識の協力が得られず長続きするわけがありません。
この本でありがたいなと思ったのは、「無意識にも無意識なりの意義がある」というところです。上記の例でいえば、ゆっくり休みたいというのは、日頃の仕事による疲れがたまっているのだからここで休まないと体が持たないぞというサインなのかもしれないのです。それを無視するから無意識が悲鳴を上げるのです。
では、無意識に合わせてゆっくり休んでいればいいのかというと、これまた問題があります。意識のレベルでは「ランニングしなきゃ、だらだらしちゃダメなんだ」と思っているわけです。一日中寝てゆっくり休めば無意識的には大満足ですが、意識的には「ああ、またダラダラと過ごしてしまって俺はなんてダメな人間なんだ」と大後悔してしまいます。これはこれで、自らのプライドを傷つけることになって褒められたことではありません。
そこで、大切なのがこの意識と無意識の両者のバランスをとるという考え方です。100点をとってはダメで、70点におさえてやる。そうすることで、無意識的にも30点はとれるわけですから「まあそれくらいならがんばってみるか」と納得しやすいというわけです。意識と無意識のバランスをとることが長続きの秘訣なのです。
無意識レベル、ダラダラしたいと思っている自分にもちゃんと意味はあるんだと言ってくれたこの本には感謝したいです。自分はダメなやつなんだと思わず、ありのままの自分を受け入れる一助になってくれます。
自己否定するのではなく付け加える
今の自分の考え方や性格を改善したいと思った時に、今までの自分を否定して0からやり直すのではなく、新たな考え方を付け加えてやると考えると抵抗感が薄れるということが書いてありました。これも目からうろこな考え方です。
これも先の7~3のバランスに通ずるところですが、今の自分を認めた上でちょっと付け加えてやってみようと考えてみると、新しいことを取り入れるときの抵抗感がグッと和らいでくれます。
あなたに必要なのは休養すること
ムリを続けることで疲労が蓄積し、日常の些細なことでイライラしてムダにエネルギーを浪費してしまう。これは自分ではなかなか気づけないことです。周りのみんなはもっと大変なんだとか、以前は大丈夫だったから今度も大丈夫だとか、これが自分にとっては日常的なことなんだと知らず知らずのうちにムリをしてしまいます。そうした結果、やらなければならないことがあるのにやる気が起きないという、やる気のムラに悩まされる。それはすべて、エネルギーの低下によるものなのだと本書は言います。
ではどうすればいいのか。どうしようもない状態になってしまったら、専門家の力を借りるべきであると。できることなら、周りの人に現状を理解してもらい、ただ休めばいいのです。あなたに必要なのは努力ではなく、ただ休むことなのです。
そのためには、人がなぜ疲れていくのか、どうして疲れに無自覚なのかについての知識が必要です。本書はその疲れのメカニズムの説明にその大半を割いています。
大切なのは、自分がムリをしているのかもしれないと自覚することだと思います。本書は、そんな無自覚な自分のムリに気づくために役に立ってくれると思います。そしてそれは、自分の周りにいる人のムリに気づくためにもきっと役に立ってくれます。
自分のメンタルケアのためにという意味でも当然お勧めな本ですが、自分の身近にいる人のメンタルケアにも一役買ってくれる1冊となっています。現状のあなたが悪いのだから、性格を変えるんだ、考え方を変えるんだという話は一切ありません。その意味で非常に読みやすい本だと思います。
他にも動と静のストレス発散方法や、感情をコントロールするための考え方など、いろんな発見のある本だと思います。記憶にとどめておいて、本屋などでぜひ本書を手にとって見てください。そして目次だけでも目を通してみてください。目次を読むだけで読んでみたいなと思わせてくれる良書だと思います。
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