秋期限定栗きんとん事件上を読んで

秋期限定栗きんとん事件 上
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下巻を読む前にじっくり推理しよう

秋期限定栗きんとん事件は〈小市民〉シリーズの第3弾です。上下巻構成となっており、おおむね出題編・解答編と言ってしまって間違いはないと思います。

今までこのシリーズは小鳩くんの主観で描かれてきました。厳密にいうと夏期限定トロピカルパフェ事件のときに、小鳩くんの主観ではない描写が混じっていましたが、あれは客観視点かつほんの一瞬だけの話でした。今回は、瓜野くんという新たな登場人物による主観描写と、今までどおりの小鳩くん主観で物語が語られます。

前作のパフェ事件で後味の悪い終わり方をした二人が、その後いったいどうなるのかが気になります。

小佐内さんの恋人としての瓜野くん

前巻で一緒にいる必要性がなくなったとして別れた小鳩くんと小佐内さん。そのまま小鳩くんのみでは小佐内さんが出てくる余地がありません。そこで瓜野くんが小佐内さんの恋人役として出てきます。

「小佐内さんに恋人だなんて・・・!」とやきもきするかと思いきや、これが意外と楽しめるのです。瓜野くんが小佐内さんにいいところを見せようと連続放火事件に躍起になっているせいもあって、小佐内さんの恋人っぽくないせいもあります。でも一番の理由はそこではないと思います。

瓜野くんは知らないけれども、読者は知っている。小佐内さんがどういう性格で、どんなときに笑うのかを。瓜野くんが見る小佐内さんの表情の変化。その意味を考えるとニヤニヤ笑いが止まりません。

小佐内さんの晴れやかな笑顔。その妖しい魅力に吸い寄せられてしまう瓜野くんですが、私達は知っている。その笑顔は何を意味しているのかを・・・。

そんなわけで、恋人ができたという割に、意外とやきもきせずに読めました。むしろ面白かったと言っていいかもしれません。

小鳩くんの恋人

小佐内さんに恋人ができたように、小鳩くんにも恋人ができます。小鳩くんに関しては、恋人ができるに至る経緯からすでに面白い。小鳩節炸裂です。初っ端から笑わせてくれます。

しかし決して笑わせるだけでは終わりません。彼女に対する思いやりを見せるために、いきなり推理を始めます。思いやりより推理の方を楽しんでしまうあたり、やっぱり笑わせてくれます。

しかしこの推理、設定が絶妙でこちらも推理に参加して楽しめる作りになっています。混雑したバスの車内で、誰かが降車ブザーを押し間違えます。ブザーを押したのは自分の目の前の席に座っている二人のうちの一人。ということは、どちらかが近いうちに降りるわけです。その席の前に立っていれば、混雑した車内で座ることができる。彼女に席を譲るチャンスがやってきたというわけです。

こういうのよくやりますよね。ここまで細かくなくとも、電車の中で自分の目的地より先に降りそうな人の前に立つとか。

よくある身近なシチュエーションも手伝って、この推理への参加はかなり白熱します。

出題編としての楽しみ

これを書いている時点で、私はすでに下巻も読んでしまっています。

上巻の時点で完璧に真相までたどり着くことは無理かもしれませんが、推論を立てることは可能でしょう。むしろ推論を立てるのは下巻を読む前にしか出来ないことなので、早く結末が読みたいとはやる気持ちを抑えて、上巻を読み直して自分なりの仮説を立ててみるのがいいと思います。

小鳩くん曰く、「これは情報操作で片がつく」とのことでしたが、私にはちんぷんかんぷんでした。小鳩くんの推理力には脱帽です。

具体的に一体何にどう仮説を立てればいいのか私自身よくわかっていませんでしたが、大体次のものに対して仮説が立てられたらいいんじゃないでしょうか。問題点を洗い出すのも楽しみの1つですが、挙げだしたらいつまでたっても下巻が読めなくなってしまいます。

上下巻構成ですから、この巻の役割は出題編です。ですが、単なる出題編にとどまらない面白さがあります。

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