密度の濃い時間を過ごせた十三機兵防衛圏
十三機兵防衛圏は発売される前からやろうと思っていたゲームだ。発売から結構な時間が経ったが、これまで手を出していなかった理由はPS4を持っていないからというだけである。
そのうちSwitchに移植されるかなとか思って待っていたが特に情報があるわけでもなく。しびれを切らしてPS4を借りてやることにしたのであった。
ゲームのプレイ時間としては40時間ほどだろうか。とりあえずひととおりクリアするだけならすぐである。三連休で一気にやってしまえるくらいのボリュームであり、むしろ短期間に集中してさっと終わらせたほうが楽しめるゲームだと思う。理由は後述。
この手のゲームの紹介はネタバレをせずにやるのは難しい1。したがって以降はネタバレを含むものと思っていただきたい。
ネタバレが嫌ならこんな記事を読んでないで、さっさと遊んでしまうとよいだろう。この凝縮されたゲーム体験はなかなか得られるものではないと思う。
どういうゲームか
13人のキャラクターが出てくる立体的なドラマが体験できるゲームという印象を持って臨んだ。実際それは間違っていないのだが、私のプレイ後の感想はこうだ。
めちゃくちゃ説得力をもたせたタワーディフェンスゲーム。
13人の少年少女たちが機兵というロボットに乗り込んで、大挙して押し寄せてくる怪獣から街を守るゲーム。その最終防衛戦をゲームとして体験するのが十三機兵防衛圏だ。
なぜ少年少女たちがロボットに乗って戦うのか。なぜ怪獣が街を襲うのか。その理由について掘り下げるのがアドベンチャーパートである。
この戦闘パートと物語をひもとくアドベンチャーパートを交互に進めながらゲームを進めていくのである。
それぞれがすべて十三機兵防衛圏の世界観を演出するために必要不可欠な要素で、お互いが補強しあって見事な世界観を作り出している。それはすべて最終戦の臨場感のためのもの、と私は捉えた。
タワーディフェンスのジャンルはそんなに詳しくないけれど、この作品のレベルで臨場感を感じながら「目標を守る」ことに心血を注がされるゲームもないと思う。
そして単に目標を守れればいいわけではない。生き延びなければならないのである。私はこの臨場感を嫌というほど味わった。それだけこのゲームの世界に引き込まれたということだろう。
そのための演出が素晴らしい、そういうゲームだ。
ストーリーについて
正直ゲームを進行している段階ではわけがわからないと思う。
理由としては13人もの異なる人物のそれぞれの視点で、1つの時間軸の物語をなぞっているからである。13個の視点がいれかわりながら物語の骨子を追っていく関係上、ゲームを進行している段階で物語の全貌が理解できる人がいたら脳の構造を教えてほしいくらいだ。
登場人物が多いうえに、時系列もぐちゃぐちゃで進行するのがまたややこしい。アドベンチャーパートはそもそもが各主人公の回想である。その回想の最中でさらに回想するのである。
主人公は入れ替わるは時系列も入れ替わるわで、アドベンチャーパートをやっているときはとても混乱した。
ただし究明編というパートで、この物語を時系列順に並び替えたものが用意されている。といってもアドベンチャーパートでの導入部分がまるまるカットされていたり、回想でおわるパートだとぶつ切りみたいな感じになっていたりするので、これはこれで違和感がある。しかし時系列順に読み直すことで、ようやく各主人公における時系列がなんとなく理解できるようになる、そんな仕組みになっている。
そういうわけで、時間をかけてじっくりアドベンチャーパートを読み込むよりは、さっさと進めて最後に振り返る方がよいと私は思う。
個人的にストーリーに関しては「え、これで終わり?」というのが最初の感想だった。最後は急に物語をたたみに来たなというあっけなさがあって少し不満だった。けれど、時系列順に物語を読み直してみてはじめて納得がいった。
それでもわりと気になるところは多い。そのあたりをプレイ済みの人とネタバレ含みでわいわい語り合いたい。
戦闘パート
大挙して押し寄せてくる怪獣から防衛目標を守るゲームである。
描写自体はシンプルなのだが、それが逆によい味出してる。徐々に敵の数に押されてジリ貧になっていくときの焦燥感とか、怪獣を一網打尽にできたときの爽快感とか。
戦闘パートに関してはまったく何も期待してなかったのだが、こうも臨場感が味わえるものなのかと驚いた。押し寄せてくる怪獣の波に防衛戦が突破されたときの胃の痛みとか、敵が迫ってきてるのに前の攻撃の硬直で動けず焦る気持ちとか。まるでパイロットになった気分を十二分に痛感させられる。
怪獣の猛攻で機兵が大破することもある。時間が経てば自動的に復帰できるのだが、その間パイロットは生身で放り出される。生身で怪獣から逃げないといけないのだ。
ゲーム中では「ダメージを負いすぎだ、いったん下がれ」と警告されるのだが、ゲーム中の私はどこに安全圏があるんだよっていう気持ちでいっぱいだった。回復する機会を見いだせずにそのまま大破、放り出されたパイロットが爆風に巻き込まれないことを祈りながら機兵の回復時間を待つという胃の痛くなる時間を過ごした。
まとめ
アドベンチャーパートで繰り広げられるドラマ、見せ方がうまいよなぁって思う。登場人物が多いことをうまく生かして、同じ教室の中にいてもそれぞれが別の話をしていて、それぞれのストーリーがあるんだなというのが感じられて面白い。
そういった演出面が非常によくできてる。各パイロットの機兵起動シーンはめちゃくちゃかっこいい。
音楽も素晴らしく、久々にサントラ欲しくなるゲームである。
タイトル画面で流れる楽曲、そのかっこよさにゲームを始める前に結構な時間そのまま聞いていた。
しいていえば、完成度が高すぎるせいかゲームクリア後があっさりすぎるように感じてしまった。肩透かしを食らったかのような感じとでも言おうか。ただこれは、私が推理小説の感覚でこの物語を見ていたせいが大きいと思う。
ゲームクリア後の感想が「これで終わり? もっとあるだろー」だった。これはストーリーを時系列で改めて見ることで解消されはしたけれど、初回クリア時のまごうことなき正直な感想だった。
ゲームの進行にしても、戦闘とストーリーを同時並行で進めていかなければ先に行けないシステムになっている。ストーリーの続きが見たいのに戦闘しなきゃいかんのか、なんてことになるのはちょっと面倒くさかったかもしれない。
ストーリーが難解というよりは見せ方を複雑にしているせいで読み解くのが大変という点もあるけれど、非常に濃いゲーム体験を味わうことができた。
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そもそもどこまでをネタバレとするのかの線引も難しいので。ストーリーの核心に触れなければネタバレではないのか、それともゲームの内容をふわっとでも分かるように匂わせたらネタバレになるのか。 ↩︎
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