人はダンジョンに潜るとき食事の問題にどう対処するのか
そもそも私が九井諒子さんを知るきっかけはダンジョン飯でした。すごい面白いコミックだと聞いていて、そこから短篇集を買ったりしていたわけです。
当時はどういう話を描かれる方なのかまったく知りませんでした。それでも何がそんなに興味を引いたのかというと、「冒険者たちはダンジョンに潜っている間、どうやって空腹を満たすのか」というテーマです。
実際に読んでみると想像以上に真面目にモンスターを調理していました。怪物を調理して食べるというのは、ある意味常識はずれの奇行なんです。現実でいうと、ぱっと思いつくのはバッタの姿煮とかでしょうか、ともかく食べることに躊躇いを持ってしまうようなものを食べるわけです。
しかし本作ではモンスターをモンスターの姿のまま食べることはほぼありません。ちゃんと調理して食べます。栄養バランスをまじめに考え、素材に合わせた調理方法を用いて、時には迷宮の罠を利用して調理するのです。
奇行のはずなのにそう見えない。むしろモンスターは調理して食べるのが自然なことなのだとすら思えてきます。それくらい自然に描写されています。
登場人物
ライオス
モンスターに対する愛が高じて、どんな味がするのか食べたいとすら思うようになってしまったサイコパスパーティのリーダー。
レッドドラゴンに食べられてしまった妹を助けるために、食事の問題はダンジョン内で自給自足で行うことにし、悲願だったモンスターを食べるという夢を実現させることができた。
モンスターを食いたがること以外は至って有能。モンスターに対する知識は豊富で、頭もよく回る優秀な戦士。
マルシル
パーティ内の紅一点、エルフの魔法使い。魔法使いとしては超優秀らしいが、ダンジョン飯1巻においてはまったくいいところが描かれていない。苦手ではあるものの回復魔法も多少使える模様。
一般的なグルメものなら「おいしい」というリアクションがもっとも重要なファクターだが、ダンジョン飯においてはマルシルの「そんなモンスター食べられるかっ!」というリアクションがもっとも大切。
嫌がりながらも背に腹は変えられず、嫌だと言いつつもしっかり食べる。
パーティ内随一の表情の豊かさを誇る。
チルチャック
感覚の鋭いハーフフットの青年。鍵開け、罠の解除が専門で、PT内でもっとも常識的かつ大人な人物。
戦闘力は低いものの罠解除のエキスパートであり、自分の専門分野に口出しされるのを嫌う職人気質。
リアリストなのか、状況に対する適応力はかなり高い。モンスターを食すことに対しても割り切りが早かったり、罠を調理に使うことについて文句を垂れつつもしっかりこなす。
センシ
自称モンスター食を10年研究しているというドワーフ。モンスターを食べようとしているライオスたちに対して、モンスター食に興味を持ってくれたことがうれしかったらしく、調理方法をアドバイスする。
レッドドラゴンに食われた妹を助けるというライオスたちに同行する。
実践と経験に基づくパーティの調理担当。モンスターを食って生活しているだけあって、戦闘力も相当のもの。
食生活の改善、生活リズムの見直し、適切な運動。至極まっとうなことを言っているのに、センシがいうと素直に同意できないのはなぜだろうか。
普段モンスターを食べているため非常識なのかというとそうでもなく、動く鎧を食べたいというライオスに対して「鎧が食えるわけないだろ」とバッサリ切り捨ててくれる、とても常識的なドワーフ。
ファリン
空腹のせいで全滅しかけたパーティを身を挺して逃がしたライオスの妹。糸目。
リレ◯トが効かずダンジョンから脱出できていないことから、レッドドラゴンの腹の中にいるものと思われる。
ライオスたちの目的は、レッドドラゴンに消化されるまでにファリンを助け出すこと。タイムリミットはおそらく1か月。
何度読んでも面白い
よく考えたら不思議ですよね。ダンジョンを冒険する冒険者たちが、食事の問題をどうしているかっていうのは。
携帯食料を持ち込んでいると考えるのが普通でしょう。実際ダンジョン飯で描かれる一般的な冒険者達はそうしているようです。
しかしどの程度ダンジョンに潜るのかにもよりますが、食料の持ち込みってあまり現実的に思えません。1日で行って帰ってくるならまだしも、数日こもるならなおさらです。潜る期間が長ければ長いほど、持ち込む食料の量が増えるわけですし。
そんな量の荷物を運びながら探索するのは大変ですし、モンスターとの戦闘もこなしながらだと余計に大変でしょう。
その点モンスターを現地で食べていくのは心理的な抵抗感は別として、お金はかかりません。保存食を食べ続けるなんて自体には陥らないので、いっそのことバランスよく栄養を補給することも可能です。さらに持ち運ぶ荷物は調理器具と調味料だけですむと、「あれこれめちゃくちゃ理にかなってね?」ってなります。もうここまでくると、ダンジョン内で自給自足するのが自然なことだとすら錯覚してしまいます。
でもやっぱりモンスター食べるのは非常識なことです。ともすればふつうのコトに思えてしまうダンジョン飯を、読者の視点でわーきゃー騒いでくれるマルシルがいるから、面白くてついつい何度も読んでしまうのです。
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