天才の虜になる理系ミステリ、すべてがFになる

すべてがFになる
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天才真賀田四季の虜になる物語

例によってアニメを見たのが読むキッカケです。なぜかはわからないのですが、既読であるとずっと思い込んでたんですよね・・・。もしかしたら本当に読んでいたのかもしれませんが、内容全然覚えてないから多分思い込みです。

この作品は理系ミステリとよくいわれていますが、読めば納得です。

謎解き部分だけでいうと、実をいうとあんまりしっくりは来なかったのですが、それ以上に理路整然とした世界観にぐいぐい惹き込まれてしまいました。

私は3つの点から実に理系の物語だなと思いました。それは内容と人物と描写です。

内容が理系

読むのにITの知識が要求されるわけではありませんが、この物語の中にはコンピュータがよく出てきます。UNIXとかtelnetとかC言語とかアンサインドインテジャとか。

UNIXってなんだよなんていう人からすると、なんか分からん専門用語出てきたぞと拒否反応が出てくるかもしれません。しかし逆にいうと、プログラマとか普段からITに慣れ親しんでいる人だと、身近な話題が出てくるので親近感が湧いてくるのではないでしょうか。

人物が理系

登場人物たちが実に理系だなと感じます。

発する言葉や考え方、所作振る舞いが知的でいて無駄がなくて合理的。会話が知的でそそられます。

探偵役である主人公が大学の助教授ということもあると思うのですが、事件の真相について推理が披露されるというよりも、授業で解説されているかのような印象を受けます。

こういった推理の披露シーンは、知識をひけらかされているようで反発を抱きがちなのですが、すべてがFになるではすんなりと受け入れられてしまいました。理路整然としていて学校の講義を受けているかのような雰囲気があるからかもしれません。

すべてがFになるの舞台は無人島にある外界から切り離された研究所なのですが、主人公の犀川先生が「理想の環境だ」とひどく気に入っていました。こういうキャラクターの考え方にも共感が抱けて面白かったです。

描写が理系

私はこれを読んだ時、ものすごく読みやすいなと感じていました。その要因の1つは、描写があっさりとしていることなのではないかなと考えています。

詩的で情緒に富んだ文章では決してありません。むしろ華美な装飾を取り払って、淡々と事実を積み上げるような文章です。

私の勝手な印象かもしれませんが、勘違いを起こしてしまうような曖昧な描写がないんですよね。想像を働かせて情景を思い浮かべるというよりは、まるで観察日誌、論文を読んでいるかのような印象です。

まさに天才

私は探偵役が犯人に出し抜かれるタイプの物語が大好きです。探偵が真相を犯人を追い詰めたと思ったら、実は探偵の行動すら犯人の手の上でまんまとしてやられるっていう展開がくると、とてもテンションが上ります。

知識自慢の探偵が手玉に取られるところが気持ちいいっていうのもあるんですが、2段構えのサプライズが好きなんです。探偵の明かす真相で驚き、しかしさらに犯人がその上をいって驚く。このときの感覚がとても気持ちよくて好きなのです。

すべてがFになるでは、犯人に出し抜かれるという表現は適切ではありません。ただ、探偵役の遥かに上をいっているという意味で、私の好きなタイプの物語といえます。

そして天才に恋をする

この物語には天才が描かれています。天才=近寄りがたい堅物というイメージがあるかもしれません。もしくは変人みたいなイメージかもしれません。

ですがこの物語で描かれる天才は、人間を超越しているという表現がぴったりくるような天才です。自分たちではおよびもしない考えをしていて、一方で子供のような無邪気さも併せ持っている。

常識にとらわれず、自由を追い求め、それでいながら干渉されることを望んでいる。とても不思議な、それでいて心を鷲掴みにする魅力を持った天才です。これを読んでしまったら、この人の物語をもっと読みたいと思ってしまうでしょう。

専門用語が出てきてややこしく感じるかもしれませんが、実に読みやすい物語だなと私は思いました。

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