超勉強法

「超」勉強法
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古さを感じさせない面白い本

20年前に刊行されてる古い本なのだが、読んでみたらまったく古さを感じさせない面白い本だった。

読むきっかけはネットで見たとある記事。パラシュート勉強法という言葉が気になって、紹介されていた本書を読むことにした。

パラシュート勉強法は、数学の勉強方法についての章で出てくる。数学といえば基礎から積み上げて徐々に高度な内容に進んでいくイメージが強い。また、とある内容に取り組んでいてそれが理解できない場合には、その基礎に立ち戻って学習し直すのが一般的であろう。しかしパラシュート勉強法は、今処理しなければならない数式・理論について、とりあえず使えるようにするだけにしようという勉強方法である。基礎に戻らず、その部分に着地してしまおうという意味でパラシュート勉強法ということだ。

これは数学に限らず応用できる話であろう。何かを勉強するときに、その分野の基礎から1つずつ勉強していくと時間がかかってしまう。自分が興味を持っている、もしくは解決しなければならないのはそれよりもっと先の問題なのに、何に使うのかよくわからない基礎の基礎から勉強していくのは効率が悪い。

プログラミングの話に置き換えてみると、とりあえずライブラリの使い方さえわかれば目的の機能が作れるという状態にすればよいという話だろう。そのライブラリがどのような原理で動いているのか理解するよりも、まず使えるようにする。とりあえずはそれでいいじゃないという感じの勉強法といえるだろう。

これは私も実体験したことがあるのでとても納得できる話だった。私の場合は、簿記の勉強であった。日商簿記1級を独学かつ短時間で取得したことがあるのだが、そのときに行ったのがまさにこれだったと思う。基礎からやっていたのでは時間がいくらあっても足りないので、とにかく過去問を解いた。解き方すら分からない状態なので、まずやったことは答えと解説の確認だ。それから該当する部分の説明が行われているテキストに戻って確認するというスタイルで勉強したのだ。普通ならテキストをひととおり読んでから問題を解くだろうが、私はその逆をやったのである。

この方法のよい点は、ずばりテキストを読む時間を削減できるということだ。問題を解くのに必要な部分だけ効率的に吸収できるのである。また実際に問題としてどう出題されるのかがわかった状態で読むので、テキストの内容がすっと頭のなかに入ってくるのである。

物ことの基礎は重要なものである。しかしそれがなぜ重要なことなのかは、それがどう使われているのかを知っているからこそ分かることではないだろうか。基礎だから、大事だからといわれても、それがどう使われるかが分からないから興味が持てない。だから基礎からやるとなかなかモチベーションが保てず挫折してしまうのではないだろうか。

本書の提示する勉強法は、一言で言い表せば「興味のあるところから勉強しよう」というスタイルなのだと思う。実際に使われている部分から、これなんだろうと思ったところから勉強するスタイルだ。パラシュート勉強法もそうだし、英語について紹介されている「教科書丸暗記法」も同じだと思う(教科書丸暗記法は、英語の文章を暗記するくらいに読み込むことで、英語のリズムや使われ方を身につけようという勉強法だと私は受け取った)。

興味のあるところ、または今直面している問題を解くのに必要な部分から学んでいくというスタイルは理にかなっているように思う。しかしそのスタイルをとるにしても、最終的には基礎の部分を勉強し直すのは避けられない。であればはじめから基礎を勉強したほうが二度手間にならなくてよいのではとも思う。きっとそれはそのとおりで、だから学校の勉強は基礎から積み上げる形で学ぶのであろう。しかしながら、その基礎が学習の意欲を削ぐ結果にも繋がるというのはなかなか頭の痛い問題だなと思う。自分が学生時代は「こんなの勉強しても何に使うのさ」とか思っていたが、今になって思えばありがたい環境だったのだなと思ってしまう。基礎から学べるのは学生のうちだけだというのは、学生時代には理解できないのが皮肉なものである。

勉強は何も基礎から学ばなければならないものではない。興味を持ったところからはじめて、理解できなくても使えるようになりさえすればとりあえずなんとかなる。そういう心構えで学習していくのもいいんじゃないかと思えたのが良かった。

基礎が分からなくても問題ないわけではないし、基礎を疎かにしていいわけでもない。しかしとりあえず使い方が分かる、実際に使えるという状態になれればそれでよしとすればいい。分数の割り算は、なぜ補数の掛け算になるのか、説明できる人は少ないけどみんなできる。それでいいじゃないというくだりは、ちょっと私の心を軽くしてくれるいいフレーズだった。

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